歯周病は、日本人の成人の約8割がかかっているともいわれるほど身近な病気です。その原因となるのが「歯周病菌」と呼ばれる細菌たちですが、実はこの歯周病菌にもさまざまな種類があり、それぞれに特徴があります。これらの細菌がどのようにして口腔内で増え、歯ぐきや歯をむしばんでいくのかを知ることは、歯周病の予防や対策にとって重要です。今回は、歯周病菌が増える原因、種類や特徴、さらに口腔内や全身に与える影響について解説します。
1. 歯周病菌とは?口腔内での働きと増える原因
歯周病菌とは、歯と歯ぐきの間にある「歯周ポケット」などに潜み、歯ぐきに炎症を引き起こす細菌のことです。口腔内には通常、数百種類以上の細菌が共存しており、その多くは害のない常在菌です。しかし、磨き残しや生活習慣の乱れによって細菌バランスが崩れると、有害な歯周病菌が増えやすくなります。ここでは、歯周病菌が増える原因を解説します。
①プラーク(歯垢)の蓄積
歯磨きが不十分だと、歯の表面にプラークが溜まりやすくなります。プラークは細菌の塊で、歯周病菌が増える温床になることがあります。
➁唾液の働きの低下
唾液には口腔内の自浄作用がありますが、加齢やストレス、薬の副作用などで唾液の量が減ると、歯周病菌が洗い流されにくくなります。
③生活習慣の乱れ
喫煙や過度な飲酒、栄養バランスの偏り、睡眠不足などの生活習慣の乱れは、免疫力を低下させ、細菌の増殖を促すことがあります。
④糖分の多い飲食物の摂取
歯周病菌は糖分をエネルギー源としているため、甘いものを頻繁に摂ると、菌が増えやすくなります。
⑤歯並びの乱れや詰め物の不適合
歯並びが悪いと歯ブラシが届きにくくなり、細菌が溜まりやすくなります。また、古い詰め物や被せ物のすき間にも注意が必要です。
歯周病菌は、日々の生活の中で知らず知らずのうちに増えていく可能性があります。口腔内の環境を整えることが、歯周病予防の第一歩です。
2. 主な歯周病菌の種類とそれぞれの特徴
歯周病を引き起こす細菌は多数ありますが、特に影響力の強い「主要な歯周病菌」がいくつか知られています。それぞれの特徴を理解することで、歯周病のメカニズムをより正確に把握できるでしょう。以下に、主な歯周病菌の種類と特徴を解説します。
①ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)
この菌は、重度の歯周病に深く関わる代表的な細菌です。酸素の少ない環境を好む嫌気性菌で、黒色の色素を持っています。毒素を出して歯ぐきの組織や骨に影響を及ぼす可能性があるとされています。また、免疫の働きを抑える力もあり、体内での防御が効きにくくなる特徴があります。
➁トレポネーマ・デンティコーラ(Treponema denticola)
らせん状の形をしたスピロヘータ菌で、他の歯周病菌とともに重度の歯周病に関与することがあります。運動性が高く、歯周ポケットの深部まで入り込みやすいため、歯ぐきの奥で炎症を引き起こしやすいのが特徴です。
③タネレラ・フォーサイシア(Tannerella forsythia)
ポルフィロモナス・ジンジバリスやトレポネーマ・デンティコーラと並び、「レッドコンプレックス」と呼ばれる歯周病の高リスク菌グループに属します。組織を破壊する力が強く、進行した歯周病でよく見られるのが特徴です。
④プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)
妊娠やホルモンバランスの変化によって増えやすい細菌です。女性の体の変化と歯周病の関係が注目されるきっかけとなった菌とされています。
⑤アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)
若い世代に見られる、急速に進行する歯周病に関係しているとされる細菌です。毒性が高く、歯ぐきや骨を急激に破壊することがあります。
⑥フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)
他の細菌と結びつきやすく、細菌の集まり(バイオフィルム)を形成しやすいという特徴があります。歯周病だけでなく、口臭の原因になることもあります。
これらの歯周病菌は、単独でも影響を及ぼすことがありますが、複数が同時に存在すると相乗的に症状を悪化させる可能性があります。菌の種類に応じた対策も、歯周病予防の大切なポイントです。
3. 歯周病菌が引き起こす口腔内のトラブルと全身への影響
歯周病菌は、単に歯ぐきの炎症を引き起こすだけでなく、進行すると口腔内の健康にさまざまな影響を及ぼすことがあります。さらに、近年では全身の健康とも深い関わりがあることがわかってきています。以下に、歯周病菌が引き起こす口腔内のトラブルと全身への影響について解説します。
①歯ぐきの腫れや出血
初期段階では、歯磨きの際に歯ぐきから出血したり、腫れたりすることがあります。これは歯周病菌による炎症反応で、歯ぐきの毛細血管が破れやすくなっているためです。
➁歯周ポケットの形成と歯のぐらつき
炎症が進むと、歯と歯ぐきの間にある歯周ポケットが深くなり、細菌がより奥まで入り込みやすくなります。その結果、歯を支える骨が徐々に溶け、歯がぐらつくことがあります。
③口臭の発生
歯周病菌が産生するガスや、炎症による膿などが原因で、強い口臭が発生することがあります。自分では気付きにくく、周囲に不快感を与えることもあるため、注意が必要です。
④歯の脱落
進行した歯周病は、歯を支える骨の破壊を引き起こし、最終的には歯が抜けてしまうこともあります。むし歯と違って痛みを伴わないまま進行するケースも多く、気付いたときには歯を失っていたという事例も少なくありません。
⑤心疾患や糖尿病などの全身疾患との関連
歯周病菌が血流に入り込むと、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などのリスクを高めることが報告されています。また、糖尿病との相互関係もあり、歯周病があると血糖コントロールが難しくなることがあります。
⑥妊娠への影響
妊婦の方が重度の歯周病になると、低体重児や早産のリスクが高まることが報告されています。そのため、近年では女性のライフステージに応じた口腔ケアの重要性が高まっている傾向があります。
このように、歯周病菌は口腔内だけでなく全身の健康とも密接に関わっているとされるため、早期発見と予防が重要です。
4. 名古屋市名東区 星ヶ丘の歯医者 成瀬歯科医院の歯周病治療
名古屋市名東区、星ヶ丘の歯医者 成瀬歯科医院では、三代にわたって地域密着の診療を行い、患者さん一人ひとりに寄り添う治療を心がけています。中でも歯周病治療とその予防は、お口の健康を守るための重要な柱です。歯ぐきの腫れや出血、歯のグラつき、口臭などは歯周病のサインかもしれません。
成瀬歯科医院では初期段階の歯肉炎から重度歯周炎まで、症状に応じてスケーリング・ルートプレーニング、外科処置、歯周組織再生治療(リグロス)など専門的な治療を行います。
▼成瀬歯科医院の歯周治療詳細
歯周病は未然に防ぐ「予防」も大切です。歯科衛生士による定期的なクリーニング(P.M.T.C)、ブラッシング指導により歯周病になりにくいお口を目指します。
▼成瀬歯科医院の予防歯科
2018年に全国2,345の歯科医院で行われた全国抜歯原因調査結果(https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-04-002)によると、歯周病は歯を失う原因の第一位です。
歯を失わないために、そしてずっと健康な口内環境を保つために、定期的なチェックとケアが必要です。
まとめ
歯周病菌には複数の種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。口腔内で静かに増殖し、歯ぐきの炎症を引き起こすだけでなく、放置すると歯の脱落や全身の疾患に関わることもあるため、注意が必要です。しかし、正しい知識と日々のケア、さらに定期的な歯医者での管理によって、そのリスクを大きく減らすことが期待できます。歯ぐきからのサインを見逃さず、早めの対応を心がけましょう。
名古屋市周辺で歯周病に関するお悩みをお持ちの方は、名東区、星ヶ丘の歯医者 成瀬歯科医院までご相談ください。
監修:成瀬歯科医院
院長 成瀬晋一
経歴
1997年東海高校卒業
2005年東京歯科大学卒業
2009年東京歯科大学大学院にて学位取得(臨床検査学研究室)
2018年愛知県歯科医師会認定 臨床スポーツ歯科医取得
2019年日本食育士協会 歯科食育士取得
2022年日本スポーツ協会 公認 スポーツデンティスト取得
2024年愛知県歯科医師会認定 臨床睡眠歯科医取得
愛知県歯科医師会認定 臨床口腔がん検診医取得
愛知県 肝炎医療コーディネーター取得
所属学会
日本外傷歯学会
日本スポーツ歯科医学会