歯周病は、日本人にとって非常に身近な病気です。むし歯と並んで歯を失う可能性もある病気ですが、「自分には関係ない」と思っている方も多いのではないでしょうか。しかし、歯周病は自覚症状が少なく、気づいたときには進行していることも少なくありません。実際、日本人の多くが歯周病を抱えているというデータもあり、身近な病気といえます。今回は、日本人における歯周病の罹患状況と、歯周病を引き起こす主な原因、そして日常生活で取り入れやすい予防法について解説します。
1. 日本人の何割が歯周病にかかっているのか?
日本人における歯周病の罹患率は高く、成人の約8割が歯周病もしくはその予備軍の歯肉炎であるといわれています。これは、厚生労働省が実施する「歯科疾患実態調査」などの公的な調査でも明らかにされており、年齢を重ねるごとにその割合は増加する傾向があります。
①20代後半からすでに多くの人が歯周病の兆候を示す
日本では、20代後半から歯周ポケット(歯と歯ぐきの間にできる溝)が深くなる傾向が見られ、30代・40代になると罹患率が増加します。特に40代以上の層では、半数以上が中等度以上の歯周病を抱えているという報告もあります。
②高齢者では重度の歯周病が増加
70代以上になると、歯周病が進行して歯を失うケースも多くなり、口腔機能の低下や全身の健康にまで影響を与える可能性があります。実際、高齢者の歯の喪失原因の第1位が歯周病であるという調査結果も存在します。
③若年層でも油断は禁物
若い世代でも、生活習慣やセルフケアの不足により、歯肉に炎症が生じる「歯肉炎」や軽度の歯周病が見られることがあります。これは将来的なリスクを高める要因となるため、早期の対策が大切です。
④自覚症状が少ないため放置されやすい
歯周病は、進行するまで目立った痛みや腫れが出にくいため、放置されることが多くあります。そのため、自覚症状がない段階で対処するには、定期的な歯科検診が重要です。
⑤喫煙者や糖尿病のある人はリスクが高い
喫煙は歯周病を悪化させる要因の1つです。加えて、歯周病と糖尿病は互いに影響し合うため、糖尿病などの持病がある方は特に気をつける必要があります。
年齢や生活習慣に関係なく、誰もが歯周病のリスクを抱えています。早期の気づきと定期的なケアによって、歯を守り、将来の健康につなげていくことが大切です。
2. 歯周病になる主な原因と進行の流れ
歯周病は、細菌の感染によって歯ぐきや歯を支える骨が徐々に破壊される病気です。原因は一つではなく、複数の要因が重なって進行していきます。
①プラーク(歯垢)の蓄積
歯周病の原因は、歯の表面に付着する細菌のかたまり「プラーク」です。このプラークが歯と歯ぐきの境目にたまり続けると、細菌が繁殖して歯ぐきに炎症を引き起こします。放置すれば、歯周ポケットの奥深くまで細菌が入り込み、歯周組織が破壊されていきます。
②歯石の付着
プラークが長時間放置されると、唾液中のミネラルと結合して硬い「歯石」に変化します。歯石は歯ブラシでは落とせないほど硬く、一度つくと歯医者での専用器具による除去が必要です。さらに、歯石の表面はザラついているため、新しいプラークが付着しやすくなり、歯周病を悪化させる悪循環を招くことがあります。
③間違った歯磨きやセルフケアの不足
正しい歯みがきができていない、または磨き残しがあると、歯周病は進行しやすくなります。特に歯と歯の間や歯ぐきの境目は、歯ブラシの毛先が届きにくく、汚れが残りやすい場所です。こうした部位はデンタルフロスや歯間ブラシを併用し、意識的にケアすることが大切です。
④噛み合わせや歯並びの問題
歯並びが悪いと、歯ブラシが届きにくい部分ができてしまい、プラークが残りやすくなります。また、噛み合わせが悪いと一部の歯に過剰な力がかかり、歯周組織(歯を支える歯ぐきや骨などの組織)に負担を与えることがあります。
⑤生活習慣や全身の健康状態
たばこ、ストレス、生活の乱れ、偏った食事も歯周病を悪くします。これらは体の抵抗力を下げてしまい、歯ぐきが細菌に負けやすくなるためです。特に糖尿病のある方は、歯周病が進みやすく、さらに糖尿病も悪くなる関係があります。
歯周病は、初期には歯ぐきが赤く腫れる程度ですが、進行すると歯がグラつき、最終的には抜け落ちることもあります。放置せず、早期に対策を講じることが重要です。
3. 歯周病を予防するためにできること
歯周病を防ぐには、毎日の丁寧な口腔ケアに加えて、生活習慣の改善や定期的な歯科検診が欠かせません。ここでは、今日から実践できる歯周病予防のポイントを整理してご紹介します。
①正しい歯磨きの習慣を身につける
歯周病予防の第一歩は、毎日の丁寧なブラッシングです。歯と歯ぐきの境目は、プラークがたまりやすく、歯周病菌が増殖しやすい場所です。毛先を45度の角度で歯ぐきに当て、小刻みに動かす「バス法」など、歯医者でも推奨される磨き方が効果的です。
また、ゴシゴシと力任せに磨くと歯ぐきが傷つき、かえって後退を招くことがあるので、優しく丁寧に磨くことを心がけましょう。
②補助清掃用具を活用する
歯ブラシだけでは取り切れない汚れを除去するために、デンタルフロスや歯間ブラシの併用が有効です。特に歯間ブラシは、歯と歯の隙間が広い部分の清掃に適しています。フロスは歯と歯の接触面にプラークがたまりやすい方におすすめです。
③定期的に歯科検診を受ける
歯周病は初期段階では痛みや腫れなどの自覚症状がほとんどありません。そのため、症状がなくても年に2〜3回の定期検診を受けることが、早期発見・早期治療につながります。
歯科医師や歯科衛生士が専用器具でチェックを行うことで、見えない部分の歯石や歯ぐきの奥の炎症も対処できます。さらに、普段の歯磨きでは落とせない歯石やバイオフィルムの徹底除去が受けられ、予防効果が高まります。
④禁煙を心がける
タバコは歯ぐきの血流を悪化させ、免疫力を低下させるため、歯周病の進行を早める要因になります。喫煙者は非喫煙者に比べて、歯周病にかかるリスクが2~6倍高いという報告もあります。歯周病の予防・治療を考えるなら、禁煙は欠かせません。
⑤生活習慣と全身の健康管理を意識する
栄養バランスの取れた食事、質の良い睡眠、適度な運動など、全身の健康を保つ生活習慣も歯周病予防に関係します。特に糖尿病のある方は、血糖コントロールをしっかり行うことが歯周病予防に重要です。
⑥ストレス対策を取り入れる
ストレスが続くと免疫力が下がり、歯ぐきの炎症が悪化しやすくなります。自律神経を整えるためにも、リラックスできる時間を作る、趣味を楽しむなど、ストレスを軽減する工夫を日常に取り入れることも予防につながります。
日々の小さな習慣の積み重ねが、歯周病を防ぐ大きな力となります。一つひとつを丁寧に実践することが大切です。
4. 名古屋市名東区 星ヶ丘の歯医者 成瀬歯科医院の歯周病治療
名古屋市名東区、星ヶ丘の歯医者 成瀬歯科医院では、三代にわたって地域密着の診療を行い、患者さん一人ひとりに寄り添う治療を心がけています。中でも歯周病治療とその予防は、お口の健康を守るための重要な柱です。歯ぐきの腫れや出血、歯のグラつき、口臭などは歯周病のサインかもしれません。
成瀬歯科医院では初期段階の歯肉炎から重度歯周炎まで、症状に応じてスケーリング・ルートプレーニング、外科処置、歯周組織再生治療(リグロス)など専門的な治療を行います。
▼成瀬歯科医院の歯周治療詳細
歯周病は未然に防ぐ「予防」も大切です。歯科衛生士による定期的なクリーニング(P.M.T.C)、ブラッシング指導により歯周病になりにくいお口を目指します。
▼成瀬歯科医院の予防歯科
2018年に全国2,345の歯科医院で行われた全国抜歯原因調査結果(https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-04-002)によると、歯周病は歯を失う原因の第一位です。
歯を失わないために、そしてずっと健康な口内環境を保つために、定期的なチェックとケアが必要です。
まとめ
歯周病は、日本人の約8割が罹患または予備軍とされており、年齢を問わず注意が必要な疾患です。自覚症状が少ないために発見が遅れることが多く、放置すると歯の喪失や全身疾患に繋がるリスクもあります。毎日の正しい歯磨きや歯科での定期検診、生活習慣の見直しによって予防が可能です。
名古屋市名東区周辺で歯周病についてお悩みの方は成瀬歯科医院までお問い合わせ下さい。
監修:成瀬歯科医院
院長 成瀬晋一
経歴
1997年東海高校卒業
2005年東京歯科大学卒業
2009年東京歯科大学大学院にて学位取得(臨床検査学研究室)
2018年愛知県歯科医師会認定 臨床スポーツ歯科医取得
2019年日本食育士協会 歯科食育士取得
2022年日本スポーツ協会 公認 スポーツデンティスト取得
2024年愛知県歯科医師会認定 臨床睡眠歯科医取得
愛知県歯科医師会認定 臨床口腔がん検診医取得
愛知県 肝炎医療コーディネーター取得
所属学会
日本外傷歯学会
日本スポーツ歯科医学会